(an imitation) blood orange Mr.Children

 Mr.Children、2年ぶりの17枚目のフルアルバム。
 前作の「SENSE」で「ロックンロールは生きている」と高らかに歌ったが、残念なことに今作でミスチルのロックは死にかけの状態となってしまった。バンドが奏でる音より、ピアノとストリングスの音が軸となってしまっては、もはやロックバンドとしては死に体だろう。アルバムの出来も、飛車角落ちとは言いたくないが、「HOME」や「SENSE」と比較すればそれだけの差があるんじゃないかな。個人的には聴きやすい「SUPERMARKET FANTASY」だろうか。Mr.Childrenに何を期待しているかで評価が分かれそうではある(多分、Amazonではボロカスだろう)。ただ、ポップセンスは相変わらずなので、安定した満足感は得られると思う。それが良いのか悪いのかは別問題だけど。
 以下、10回くらい聴いた感想駄文。
 hypnosis。ド真ん中の重量級バラード。マンネリその1。AメロBメロは素晴らしいが、サビがどうにもイマイチな気がする。「HERO」や「しるし」にはなれなかったな、と。B'zで喩えれば「OCEAN」に対する「永遠の翼」みたいな感じ。ただ、1曲目に持ってきたことは素直に評価できる。世のロックバンドはキャリア中に1回くらいはこの方式を真似しても良い。
 Marshmallow day。軽快なポップチューン。このポップセンスは邦楽随一だと言わざるを得ない。ナカケーのベースが踊っていて、とても素晴らしい。
 End of the day。歌詞が反則に近い。正に社会人のアンセム。帰宅時に聴くと、訳もなく勇気づけられていたりする。ミスチルの歌詞に感動する日が来るなんて、学生時代の自分は信じないだろうなw このアルバムで唯一のロックチューンであり、一番好きな歌。
 常套句。ピアノとストリングスがベースのシンプルなバラード。マンネリその2。一部分だけ、なんか「CANDY」のメロディとダブって聴こえるので困る。
 pieces。煮え切らないようなサビのメロディと力強いバックの演奏が心地良い。あと、ベースラインも良い。こういう絶妙な楽曲は曲順によっては映えるのに、似たようなテンポの楽曲挟まれているのが非常に惜しい。
 イミテーションの木。ミディアムテンポの優しいポップソング。アルバムの核となる歌なんだろうけど、hypnosisに続いて、これも惜しいと感じた1曲。「彩り」にはなれ(ry
 かぞえうた。復興支援で制作された1曲。そういう背景を知っているせいか、変なバイアスが掛かってしょうがない。他の楽曲よりシリアスさが異なって聴こえる。
 インマイタウン。ややジャズっぽいお洒落なスローチューン。本当にベースが良い仕事し過ぎ。この曲もpiecesと同様、アルバムの構成が画一的なせいで非常に損していると思う。
 過去と未来と交信する男。テクノ調の楽曲として、「フェイク」がシングルで、「ロックンロールは生きている」がアルバムで完成されてしまっているので、目新しさの観点ではなんとも残念な感じ。2番のサビの後に展開される大げさなシンセがどうにも不人気なようだけど、この安っぽさが最高なんじゃないか、と個人的には思っている。なんか妙に癖になるんだよね。
 Happy Song。行進曲のような力強いドラムとホーンが印象的。Bメロの「WoW… Oh WoW」という部分が、ライブでは合唱となるんじゃないかな。ものすごく楽しそうだ。
 祈り 〜涙の軌道。マンネリその3。非常に既視感の溢れるバラードだが、「笹舟のような祈りを浮かべればいい」というフレーズとメロディが綺麗すぎて、何も文句は言えなくなってしまう。こういうのを聴くと、桜井和寿は本当に天才だな、と思う。

[(an imitation) blood orange](初回限定盤)(DVD付)

[(an imitation) blood orange](初回限定盤)(DVD付)