ヘヴン 川上未映子

 今まで純文学は基本的に敬遠してきたが、最近は抵抗というか摩擦というか、そんなものがだいぶ少なくなってきたような気がする。
 ということで、作家兼歌手というマルチな才能を持っている、川上未映子の著作を手に取ってみた。「わたくし率 イン 歯ー、または世界」がものすごく気になったが、とりあえず無難なタイトルである「ヘヴン」を選択することに。
 最近巷を賑わせている「いじめ」を主題にして、それに連なる善悪の根源を問う、といった大層な小説なんだけど、やはり中身はそこそこ重苦しい。幸いにして僕はえげつないほどの暴力がふるわれている現場を見たことがないので、正直こういう小説は苦手だ。最近のニュースから流れてくる現実もフィクションと大差が無いので、本当に遣る瀬無い気持ちになってしまう。いじめって無くならないかなぁと思うけれども、水が高いところから低いところに流れるように、力も強いものから弱いものへふるわれてしまう事が多いので、結局のところ無くなりはしないのだろう。子供の世界でも、大人の世界でも、理不尽な暴力は終わらないし、止めることが出来ない。それでも、作品中の登場人物が言っていたように仕方ないといって割り切ることを善しとすることは出来ない。
 人間がもっと単純だったらこんな風にはなり得なかったのかなぁ。
 とりあえず現実に起こっている問題に抱く思いとしては、「いじめ」っていう言葉を撲滅して欲しいね。殴ったり蹴ったり、金をせびったり、死んだ蜂食わしたり。これらは言葉が感じさせる印象を遥かに凌駕していると思う。

ヘヴン (講談社文庫)

ヘヴン (講談社文庫)

 23冊目。