2012年に読んだ小説

メモとしても書ききれなかった読了小説。 1年間で計64冊。1週間に1冊以上読めて良かった。犬はどこだ (創元推理文庫)作者: 米澤穂信出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2008/02/29メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 60回この商品を含むブログ (145件) を見…

SOSの猿 伊坂幸太郎

解説にも記載されていたが、ここら辺の作品は「伊坂幸太郎の第2期」というものらしい。よくある「売れたアーティストが自分の趣味を前面に押し出し始めた」という第2期だ。結局は独りよがりな結果となり、つまらないところに着地するというオチが大抵なのだ…

光媒の花 道尾秀介

道尾秀介の文庫最新刊。第23回山本周五郎賞受賞作。 読んでみての感想なんだけど、道尾氏ってこんなに文章がうまかったっけ?、と思ってしまった。ひたすらに文体が綺麗で淀みないのである。今のところ「鬼の跫音」に収録されている「冬の鬼」が個人的な氏の…

JORGE JOESTAR 舞城王太郎

舞城王太郎の新刊は「ジョジョの奇妙な冒険」のノベライズ。 正直ジョジョは「あ、ありのまま〜」と「そこにしびれる〜」のAAくらいしか知らないので、少し購入をためらったが、舞城をやらかしてくれることを期待して買ってみた。 ……。 やっぱり舞城王太郎は…

ふたりの距離の概算 米澤穂信

古典部シリーズ最新刊。 アニメは本当に出来が良かった。青春からほど遠いところに生きているので、青臭い話は見ていて面白くてしょうがない。最終回以外は全てリアルタイムで見たので、相当ハマっていたんだな、と自分でも思う。 で、「ふたりの距離の概算…

厭な小説 京極夏彦

京極夏彦は本当に頭がおかしいと思う(笑)。 厭な短編を7編収録した、その名も「厭な小説」。ホント、まともな思考じゃない。 しかし、「厭」という感情に焦点を当てた当作品。猟奇的な気持ち悪さや胸糞の悪い登場人物がいっぱい出てくる訳でもなく、精神的…

この世の全部を敵に回して 白石一文

小説なんてルールがないので何をやっても構わないんだけど、これは個人的にありとは言えない。登場人物が延々と思想をぶちまけるという斬新なスタイルなんだけど、だったらエッセイでいいじゃんと思ってしまう。作者自身が考えていることなのかどうかは知り…

K・Nの悲劇 高野和明

「ジェノサイド」や「13階段」の作者、高野和明氏の描くサスペンス・ホラー。 新婚の妊婦に正体不明の女が憑依して、というとこからどんどん話は加速していく。流産可能な期間をタイムリミットと設定し、妊婦の夫と精神科医が奔走するんだけど、まんま「13階…

追憶五断章 米澤穂信

古典部シリーズが絶好調の米澤穂信の新作。 いわゆる「リドル・ストーリー」というオチを明確に示さないものを扱ったミステリィ小説である。ミステリィに明るくない読者にとって、米澤氏の小説はお手軽に古典的な形式を楽しめるのでありがたかったりする。 …

鍵の掛かった部屋 貴志祐介

防犯探偵・榎本シリーズの第3弾。 正直こいつが月9になるとは誰も予想していなかっただろう。ミリ単位も見ていないので出来はどうなのか分からないけど。 さて、前作に引き続いて今作も短編集である。内容は……ファンの方なら、まあ察していただけるだろう。…

オブ・ザ・ベースボール 円城塔

円城塔が純文学作家として"再デビュー"した最初の作品。 この作品の設定を簡単に書くと、空から人が降ってくる町でレスキュー隊をしている主人公はベースボールのプレイヤーだった、という感じ。 …………。 な… 何を言っているのか わからねーと思うが(ry スト…

ヘヴン 川上未映子

今まで純文学は基本的に敬遠してきたが、最近は抵抗というか摩擦というか、そんなものがだいぶ少なくなってきたような気がする。 ということで、作家兼歌手というマルチな才能を持っている、川上未映子の著作を手に取ってみた。「わたくし率 イン 歯ー、また…

慟哭 貫井徳郎

初の貫井徳郎。とりあえず有名なデビュー作から読んでみた。 10年前に出版されたことを考えれば、良いトリックなのだろうか? 色んなタイプのミステリー小説を読んできた人間ならば、読み始めて10分ほどでネタが割れてしまうかもしれない。 もうこの手のタイ…

The Indifference Engine 伊藤計劃

ついに伊藤計劃がリリースした生前の作品は全て文庫化された。 しかし、まだまだ「Project Itoh」は終わらない。最後に収録されている「屍者の帝国」は、円城塔が引き継いで出版する予定だ。作風は全然違うので、正直出来栄えは未知数ではあるけれど。 日本…

ブラッド・スクーパ - The Blood Scooper 森博嗣

森博嗣流の剣豪小説。シリーズ第2弾となる。構想的には3作でシリーズ完結を見込んでいたらしいが、どうやら5作ほど要するとのこと。「スカイ・クロラ」シリーズと似て非なる当シリーズ。非常に嬉しい話である。 血を掬う者(?)というタイトルから連想され…

トーマの心臓 森博嗣

森博嗣、文庫の最新刊。 まんまプロの同人誌である。清純派AV女優みたいだけれど、それ以上語るべき部分もない。原作が少女マンガな所為か、微妙に男性描写が同性愛を感じさせる。ここら辺は好き嫌いがあると思う。森氏には残念だが、原作を読んでみたいとい…

花と流れ星 道尾秀介

真備シリーズ第三弾。シリーズ初の短編集であり、かつシリーズ最新作でもある。2009年に発行されて以来、音沙汰が無いので、あまり続編は期待できないのかもしれない。まあ、京極夏彦の百鬼夜行シリーズと似通ってるし(キャラ的に)、他の著作の方が断然面…

後藤さんのこと 円城塔

発刊される度についていけなくなる作家、円城塔。 とりあえず読んでみたが、この「後藤さんのこと」なんて、1mmも理解できない(笑) ある意味凄いことなんじゃなかろうか。ようやく気付いたことなんだけど、多分この「訳の分からなさ」を楽しみに、僕は氏の…

天使の囀り 貴志祐介

黒い家の次に出版された貴志祐介のホラー小説。 迷ったら貴志祐介、と個人的には思っているくらい、氏の安定感は凄い。ちなみに文庫化されたもので未読なのは「十三番目の人格 ISOLA」と「鍵のかかった部屋」の2つだけ。そろそろ貯金がなくなってしまう……。 …

WILL 本多孝好

著者のヒット作「MOMENT」の続編。ブランクが7年の続編なので、特に内容を知らなくても全然読めるけど、やっぱり読んでおいた方が吉だと思う。 しかし、本多氏はあいかわらずだね。文面からロマンチストっぷりが匂う匂う。主人公の森野が悲劇に酔っているよ…

幽談 京極夏彦

京極小説の別天地、と本の帯に書かれていたが、別にそんなことは無い。氏の小説からエンタメ部分を取っ払ってしまえば、丁度こんな感じになるだろう。 中でも最終節の「こわいもの」は良い。これが京極氏の論理だ、と端的に感じさせてくれる。百鬼夜行シリー…

タカイ×タカイ CRUCIFIXION 森博嗣

Xシリーズの第三弾。 なんというか、特筆する点は何も無い。このシリーズは個人的にファーストフードを思わせる。お手軽さが売りみたいな、そんな感覚。 最新作「ブラッド・スクーパ」に期待しよう。タカイ×タカイ CRUCIFIXION (講談社文庫)作者: 森博嗣出版…

この胸に深々と突き刺さる矢を抜け 白石一文

会社の先輩が電車の中で読んでいたのを思い出して、ちょっと手を出してみることに。上下巻の2冊に加え、参考図書の引用に継ぐ引用の構成、啓蒙思想(?)満載の内容であるが、個人的には非常に面白かった。ストーリー自体には何のカタルシスもなく、フラット…

ここはボツコニアン 宮部みゆき

宮部みゆきの最新刊。 ゲームのボツネタを主題としたファンタジーの新シリーズである。 ……。 たぶん宮部ファンの半数以上の人がこう思ったんじゃないだろうか。ドリームバスターシリーズを先に書いてくれ――と。宮部氏って結構シリーズを抱えてて、思いつくだ…

恋都の狐さん 北夏輝

第46回メフィスト賞受賞作。 灰汁の非常に強いこの賞で恋愛小説というジャンルが制するとは、いったいどんな珍事が起こったのだろうか。僕が今まで読んだ同賞の受賞作は全て殺人が絡んでおり、人の死なないメフィスト賞というだけでも興味が湧いた。 という…

13階段 高野和明

最新刊「ジェノサイド」があちらこちらで有名な同作者のデビュー作。なんとなく敬遠していたけど、ここに至って読んでみることに。 光市母子殺害事件の死刑判決確定により、わりとタイムリーなタイミングで読了となってしまった。思うところは色々あれど、社…

龍神の雨 道尾秀介

第12回大藪春彦賞受賞作。この賞がどういった位置づけのものか分からないが、作品としては秀作でした。そろそろ作品の構造が既存作と似通ってきたが、それでも全然面白いのは流石道尾氏といったところかな。 「ラットマン」以降、道尾氏の安定感は本当に目を…

硝子のハンマー 狐火の家 貴志祐介

文庫化されている「防犯探偵・榎本シリーズ」を読了。これで今年は5冊目となる。 真っ向からミステリーを描いているので、非常に好感は持てるんだけど、やっぱり他の著作に比べると地味。基本的に事件が起こって謎を解くという潔さの所為か、どうなるんだと…

Boy's Surface 円城塔

祝! 芥川賞候補――と思ったら、ノミネートは結構されているご様子で。意外にメジャーな作家なのかもしれない。 当作品の感想については一言。とにかく訳が分からない小説という他ない。数理的要素を擬人化しようなんてトチ狂った作家はこの人だけなんじゃな…

ビブリア古書堂の事件手帖 三上延

約8ヶ月ぶりに日記を再開。 正直文章を書いていないと、スキルがどんどん劣化していってるのを感じる。今度はサボらないように頑張ろう……。 さて、仕事のあった年末年始。疲れている中であんまり文章の細かい本は読みたくねえな、と思いながら手に取ったのは…