厭な小説 京極夏彦

 京極夏彦は本当に頭がおかしいと思う(笑)。
 厭な短編を7編収録した、その名も「厭な小説」。ホント、まともな思考じゃない。
 しかし、「厭」という感情に焦点を当てた当作品。猟奇的な気持ち悪さや胸糞の悪い登場人物がいっぱい出てくる訳でもなく、精神的な部分で厭な気分にさせてくるのだ。ガラスを爪で引っ掻いたような感じである。
 7編の収録作の内、ベスト(むしろワーストか?)の話は「厭な彼女」。主人公が本当に心の底から厭な事だけを繰り返し行い続ける彼女を巡る短編。読んだだけで、ああ厭だな、と思うこと請け合いなしである。次点は「厭な家」。厭な彼女と構図が似ているのだけれど、これは文章の回りくどさが厭な気持ちにさせてくれた。
 ところで、書店で本書を購入して数日後、土砂降りの雨に打たれて、鞄にきっちりとしまい込んでいたはずなのに、ページの上部を濡らしてしまった。読み進めるたびに、水分を含んで皺になった箇所が増えていって、非常に目立ってしょうがない。新品の本はページがすっと綺麗に揃っているはずなのに、ページ数の書いてある箇所が撓んで気になってしょうがない。きちんとページをめくる事ができず、ペラペラと大きな音を立てるのが鬱陶しくてしょうがない。
 ああ、厭だ厭だ。

厭な小説 文庫版 (祥伝社文庫)

厭な小説 文庫版 (祥伝社文庫)

 29冊目。