K・Nの悲劇 高野和明

「ジェノサイド」や「13階段」の作者、高野和明氏の描くサスペンス・ホラー。
 新婚の妊婦に正体不明の女が憑依して、というとこからどんどん話は加速していく。流産可能な期間をタイムリミットと設定し、妊婦の夫と精神科医が奔走するんだけど、まんま「13階段」と同じ流れで少しがっかり。それにこのオチはないかな。色んな病状や事象が散りばめられているくせに、この終着点では消化不良を感じざるを得ない。まあ、ミステリィとして読んでいた僕が悪いんだろうけど。
 まあ、この本で作者が言いたかったことはミステリィ的な面白さでもサスペンス的な恐怖感でもない。単純に「欲望に支配されてセックスすんなよ、オメーら」だと思う。冒頭にある濃密な情事のシーンで少しでも性的興奮を覚えた人は、まんまと作者の術中に嵌り、そして敗北した者です。まあ、私ですが。

K・Nの悲劇 (文春文庫)

K・Nの悲劇 (文春文庫)

 27冊目。