Transit of Venus Three Days Grace

 Three Days Graceの約3年ぶりとなるニューアルバム。
 メロディこそが正義を貫き続けるロックバンド。洋楽の中で、僕が一番愛して止まないバンドである。リリースがきっちり3年周期なので、一時的に同系統のバンドである「RED」に浮気してしまったが、本当に許してほしい。
 やはり彼らは格が違う。1stの「Three Days Grace」、2ndの「One-X」、3rdの「Life Starts Now」と順調に傑作を送り続けているので、ここら辺でそろそろ凡作が誕生するのではないかと個人的には危惧していたけれど、試聴してみてそれは杞憂で終わる。4thアルバムとなる今作も紛れもない傑作だった。プロデューサーもハワード・ベンソンからドン・ギルモアに変更となった所為か、分厚いギターの音がやや鋭い音に変わり、バンドサウンドも切れ味が鋭くなったような気がする。
 とりあえず20回以上聴いたので、1曲ごとに簡単な感想を。
 Sign of the Times。同じ歌メロを繰り返すという単調な構成なんだけど、静と動を巧みに扱いながら進行するので、全く単調さを感じさせない。導火線に火をつけた爆弾のように、アダムのボーカルの弾ける瞬間がたまらなく格好良い。これは間違いなく彼らの新機軸だと思う。プロデューサーの変更を端的に感じることのできる一曲。
 Chalk Outline。今作の1st Single。前曲が夕闇のイメージなら、こちらは真夜中の午前2時といったところか。サビの畳み掛けるリリックが印象的だけど、今までの1st Singleと比較するとやや地味。イントロでギューンと張り上げるギターが好きだったりする。
 The High Road。ミドルテンポでこういう楽曲をやらせると右に出る者はいないと思う。マンネリの塊のような一曲なんだけど、思わず口ずさんでしまえるほどメロディが良すぎるので、あんまり気にならない。
 Operate。サウンドはハードなんだけど、カントリーのような気軽さがサビメロで漂っている。今回のアルバムからダークな雰囲気が消えたと言われる所以はこのあたりにあるのかもしれない。
 Anonymous。今作の「Never Too Late」枠。2ndに収録されてても違和感はないと思う。3分ちょっとのコンパクトさとは裏腹に、サビの異様なダイナミックさが素晴らしい。「Hello, Hello, Hello」というバックコーラスに合わせて、「I feel so anonymous」と叫ぶアダムのボーカルが良い。個人的には次のシングルと予測する。
 Misery Loves My Company。ストレートなロックチューン。これはあんまり書くことないw
 Give In to Me。まさかのマイケル・ジャクソンのカバーw 原曲に忠実なアレンジである。最後のサビの迫力はすさまじい。アダムの裏声に笑ったのは僕だけではないはず。名曲はどんなアレンジをされても名曲。マイケルに関しては、Beat It(Fall Out Boy)くらいしか知らないけれど、あっちも良かったしね。
 Happiness。これが一番好きかもしれない。イントロがまんま「The Good Life」だったけど、あとはケチのつけようがない出来だった。イントロの疾走感、Aメロのスロウな溜め、サビで感情をぶちまけるアダムのボーカルと、目紛しく変わる展開に圧倒され続ける。1stと3rdの雰囲気が見事に融合した傑作。これを1st Singleにして欲しかったな。
 Give Me a Reason。前曲もそうだけど、こちらもメリハリの効いた一曲。ただし、こっちはサビでもり下げるパターン。サビの裏で鳴る子気味良い綺麗なギターリフが良い。
 Time That Remains。アコースティックでポップな一曲。Give Me a Reasonと続いている所為か、個人的にはどうにも立ち位置が微妙かな。ハードな楽曲の間にあれば、もう少し映えただろう。
 Expectations。イントロが印象的。久々に1stっぽいと思った。人の期待なんてくそくらえ、と叫ぶ歌詞が良いね。この歪み具合が彼らの真骨頂だろう。
 Broken Glass。前作でBreakを聴いていなければ、おいおいと感じただろう一曲。ど真ん中のUSロックなので、これを彼らが歌う必要ってあるの?、ときっと思っただろう。でも、まあ、メロディが正義なんですよ。
 Unbreakable Heart。これが次回作の布石になるのかどうかは本人たちにしか分からない。アルバムの〆に衝撃的な爆弾を置いていきやがったものだ。Three Days Graceというイメージを完全にぶち壊す一曲だったと思う。一聴するとサビも弱いんだけど、聞き終わった後、妙に癖になっている。「You're the one, you're the unbreakable heart」と頭の中で残響し、気がつけば口ずさむほどにはまっているという寸法だ。シンセサイザーもふんだんに取り込まれているので、良くも悪くもファンの記憶には残るんじゃないかと思う。

Transit of Venus

Transit of Venus

 日本人に受けると思うんだけど、全然流行る気配がないのが非常に悲しい。世界売上げ600万枚のバンドなんだから、せめてレンタル屋には普及して欲しいな。