ふたりの距離の概算 米澤穂信

 古典部シリーズ最新刊。
 アニメは本当に出来が良かった。青春からほど遠いところに生きているので、青臭い話は見ていて面白くてしょうがない。最終回以外は全てリアルタイムで見たので、相当ハマっていたんだな、と自分でも思う。
 で、「ふたりの距離の概算」。二年生に進級した古典部のメンバーたちが新入部員を迎え入れたが、そのメンバーが即時退部。その原因は部長の千反田えるにあって?、というお話。
遠まわりする雛」で青春ラブコメを見せつけられたので、それを期待していた僕は肩すかしをくらってしまった。新入生なんてどうでもいい。奉太郎とえるのラブコメが見たいんだ、と声を大にして叫びたい。こういう人は少なくないと思うw 多分作者の意図する読者ではないんだろう。最新刊を読むとそれがひしひしと伝わってきたよ。

ふたりの距離の概算 (角川文庫)

ふたりの距離の概算 (角川文庫)

 30冊目。

厭な小説 京極夏彦

 京極夏彦は本当に頭がおかしいと思う(笑)。
 厭な短編を7編収録した、その名も「厭な小説」。ホント、まともな思考じゃない。
 しかし、「厭」という感情に焦点を当てた当作品。猟奇的な気持ち悪さや胸糞の悪い登場人物がいっぱい出てくる訳でもなく、精神的な部分で厭な気分にさせてくるのだ。ガラスを爪で引っ掻いたような感じである。
 7編の収録作の内、ベスト(むしろワーストか?)の話は「厭な彼女」。主人公が本当に心の底から厭な事だけを繰り返し行い続ける彼女を巡る短編。読んだだけで、ああ厭だな、と思うこと請け合いなしである。次点は「厭な家」。厭な彼女と構図が似ているのだけれど、これは文章の回りくどさが厭な気持ちにさせてくれた。
 ところで、書店で本書を購入して数日後、土砂降りの雨に打たれて、鞄にきっちりとしまい込んでいたはずなのに、ページの上部を濡らしてしまった。読み進めるたびに、水分を含んで皺になった箇所が増えていって、非常に目立ってしょうがない。新品の本はページがすっと綺麗に揃っているはずなのに、ページ数の書いてある箇所が撓んで気になってしょうがない。きちんとページをめくる事ができず、ペラペラと大きな音を立てるのが鬱陶しくてしょうがない。
 ああ、厭だ厭だ。

厭な小説 文庫版 (祥伝社文庫)

厭な小説 文庫版 (祥伝社文庫)

 29冊目。
 

この世の全部を敵に回して 白石一文

 小説なんてルールがないので何をやっても構わないんだけど、これは個人的にありとは言えない。登場人物が延々と思想をぶちまけるという斬新なスタイルなんだけど、だったらエッセイでいいじゃんと思ってしまう。作者自身が考えていることなのかどうかは知りようがない、というところが気に食わないなぁ。
 次に刊行された「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け」はその辺りがうまくバランスのとれた作品になっているので、当小説が出版されたことにも一応意義があったんだろうとは思うけどね。

この世の全部を敵に回して (小学館文庫)

この世の全部を敵に回して (小学館文庫)

 28冊目。

ランドマーク ASIAN KUNG-FU GENERATION

 アジカン、2年ぶりとなる7thアルバム。
 個人的な感触としては、「サーフ ブンガク カマクラ」+「マジックディスク」といった印象だろうか。適度に荒々しく、適度にポップなアルバム。前作がブラスやストリングスを多用したアルバムだったので、やや地味に感じてしまうのは致し方ないのかもしれない。
 以下1曲ごとの感想。

1. All right part2
 えっちゃん天使。そんな天使に精子と歌わせるゴッチは流石変態。
2. N2
 シンセを多様したアジカンの新機軸。ハードだけど既存曲なので、やや冷める。
3. 1.2.3.4.5.6. Baby
 ポップな数え歌。
 歌詞を見ながら聴くとつまらんのに、何気なく聴いていると良い曲。不思議。
4. AとZ
 キヨシ作曲の異色曲。
 マーチングバンドのイントロのようなドラムが際立っていて、非常に素晴らしい。
5. 大洋航路
 稲村ケ崎ジェーンみたいなポップチューン。
 ミドルテンポの楽曲が多いので、このアルバムでは映える。
6. バイシクルレース
 当アルバムの白眉。ダイナミックな一曲。
7. それでは、また明日
 NARUTOのタイアップ。
 アジカンのロックチューンど真ん中といった感じか。まさに職人のような出来映えだと思う。
8. 1980
 イントロのリフが完璧。山ちゃんクレジットの曲は外れなしだなぁ。
9. マシンガンと形容詞
 新世紀のラブソング V2.0である。マシンガンとキィヨォシィ。きっとわざとだろうw
10. レールロード
 迷子犬と雨のビート V0.9である。少し物足りない。
11. 踵で愛を打ち鳴らせ
 このシングルがこのアルバムを端的に表現していると思う。
 軽快に流れるようなメロディが良い。
12. アネモネの咲く春に
 Too Lateと叫ぶゴッチ。しかし何故か希望を感じさせる力強い一曲。これが一番好きかな。

ランドマーク(初回生産限定盤)(DVD付)

ランドマーク(初回生産限定盤)(DVD付)

ランドマーク

ランドマーク

K・Nの悲劇 高野和明

「ジェノサイド」や「13階段」の作者、高野和明氏の描くサスペンス・ホラー。
 新婚の妊婦に正体不明の女が憑依して、というとこからどんどん話は加速していく。流産可能な期間をタイムリミットと設定し、妊婦の夫と精神科医が奔走するんだけど、まんま「13階段」と同じ流れで少しがっかり。それにこのオチはないかな。色んな病状や事象が散りばめられているくせに、この終着点では消化不良を感じざるを得ない。まあ、ミステリィとして読んでいた僕が悪いんだろうけど。
 まあ、この本で作者が言いたかったことはミステリィ的な面白さでもサスペンス的な恐怖感でもない。単純に「欲望に支配されてセックスすんなよ、オメーら」だと思う。冒頭にある濃密な情事のシーンで少しでも性的興奮を覚えた人は、まんまと作者の術中に嵌り、そして敗北した者です。まあ、私ですが。

K・Nの悲劇 (文春文庫)

K・Nの悲劇 (文春文庫)

 27冊目。

追憶五断章 米澤穂信

 古典部シリーズが絶好調の米澤穂信の新作。
 いわゆる「リドル・ストーリー」というオチを明確に示さないものを扱ったミステリィ小説である。ミステリィに明るくない読者にとって、米澤氏の小説はお手軽に古典的な形式を楽しめるのでありがたかったりする。
 しかし、あいかわらず結末が苦い。主人公が主人公ですらないというのが、もうなんともいえない……。
 物語中に出てくる5つのリドル・ストーリーの出来も良いので、最後まで面白く読めると思う。

追想五断章 (集英社文庫)

追想五断章 (集英社文庫)

 26冊目。

鍵の掛かった部屋 貴志祐介

 防犯探偵・榎本シリーズの第3弾。
 正直こいつが月9になるとは誰も予想していなかっただろう。ミリ単位も見ていないので出来はどうなのか分からないけど。
 さて、前作に引き続いて今作も短編集である。内容は……ファンの方なら、まあ察していただけるだろう。どうにも貴志氏の本格ミステリは面白味にかけるんだよなぁ。多分ガチガチに固めたトリックそのものに驚きや目新しさ、もしくは派手さがないのかもしれない。だいたいふーんと納得して終わってしまう。本格ミステリってそんなものだろ、と言われてしまえば、それはそうなんだけどね。

鍵のかかった部屋 (角川文庫)

鍵のかかった部屋 (角川文庫)

 25冊目。